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お知らせ

第5回 浜松ICTシンポジウム(10月30日終了)開催概要のご報告*期間限定

2021年12月23日

第5回 浜松ICTシンポジウム 開催報告

Hamamatsu Information and Communication Technology Symposium 2021

第5回浜松ICTシンポジウムもご協力・ご参加を賜り、誠にありがとうございました。
厚く御礼を申し上げますとともに、開催当日の概要をここにご報告申し上げます。
2021年12月吉日 NPO法人 浜松ソフト産業協会

「未来価値の創成5」いま、浜松から
開催日時:2021年10月30日(土)15:00~17:00
開催方法:オンライン配信
主催:特定非営利活動法人 浜松ソフト産業協会

【第1部-1】特別講演「DXプロジェクトの進め方」


佐藤 麻希 氏
西日本電信電話株式会社
エンタープライズビジネス営業部 デジタルデータビジネス担当 担当部長
導入部でDXは「既存業務のデジタル化だけではなく、ITの活用」を通じてビジネスや組織を変革すること」と確認し、その課題は主に「デジタル人材の不足」「DXのテーマ設定」「ICT環境準備」に集約されると提示した。
 
課題解決のための施設「LINKSPARK」を新たに名古屋にも開設し、ユーザー、パートナー企業と連携し課題解決する場を提供しているとした。
DXプロジェクトの進め方として4点、強調した。
i. 目指す姿を明確にし、トップがコミットする必要がある。
ii. 現状を棚卸し、可視化したうえで分析し、改善施策を検討する。
iii. 推進する人材は「企業のビジネスを理解し」「データ活用の知見を持っている」この2つが重要。外部からの調達は難しく社内で育成するのが肝要。
iv. 組織の縦割りを取っ払い、フラットに主観的な意見をぶつけ合う必要がある。
 
最後に地域製造業における先行事例として「シェアードファクトリー構想」を紹介。IT基盤シェアリングの例として汎用AI外観検査を作るというもの。

【第1部-2】DX事例講演①「まちこうばのDigital Experience」


山岸 洋一 氏
三光製作株式会社 代表取締役社長
事業は、めっきやアルマイト処理などの各種表面処理であり、製品をお預かりして付加価値をつけてお返しする仕事。
 
DXのスタートとしてメールで加工の完成を知らせるサービスを2009年にスタート。さらに顧客納期達成度のリアルタイム見える化を行った。DXとして3つの概念で考えている。コミュニケーション、製造現場、営業(間接)である。
 
i. コミュニケーションのDXとしてはさまざまなツールを使い分けているが、社内オフィシャルLINEグループを作り普段のコミュニケーションから活発化させてきた。
ii. 製造現場のDXとしては、危ない、きつい、目が疲れるなど大変なめっき加工をロボット化する「ROBOめっき」を推進している。
iii. 営業のDXとしては営業の仕事を再定義<最初のコンタクトから新規受注、継続お取引から最後はファンになっていただく>取り組みにマーケティングツールを活用。インサイドセールス(非接触型の営業活動)、MA(マーケティングオートメーション)
最後にデジタル化で可能なことをまとめた。
i. 仕組み(プロセス)を変える
ii. 接点を増やし、価値を増やす手助けをする。
iii. 費用対効果については2つの考え方がある。
 1. 投入コストと予想される効果は同じ土俵、物差しで評価できるのか。できる場合は簡単。出来ない場合は、失敗許容度で経営判断すればいい。
 2. やってみることに意味がある場合もある。経験値を増やす、機会損失を減らす、人材育成の機会とする。

【第1部-2】DX事例講演②「ものづくりDXへの挑戦」


堀尾 健人 氏
株式会社イハラ製作所 総務部
事業内容は工作機械のセットアップ、産業用ロボット、アルミダイカスト製品の製造など。堀尾氏自身はITの知識経験がない総務部門所属。その中でこのようなことを任せていただいた。
 
都田第二工場のDXの紹介を行った。ポイントは「稼働状況見える化システム」と「生産スケジューラー」の導入であった。
稼働状況見える化システムは 2019/9構想~2020/3発注~2020/11運用開始
生産スケジューラーは 2020/4に発注、2021年運用開始
生産管理はEXCEL/VBAで行い、上記2システムのデータを流し込むことになった。
DX推進において重要だと感じた点
i. 管理職のDXへの理解が必須。コスト削減だけが目的ではないのでそこも含めての理解が重要。
ii. プロジェクトメンバーに現場スタッフを巻き込む。
iii. 推進担当者を選任する。
 
今後も浜北工場への導入や、不良情報と稼働状況の同期など構想している。

【第1部-3】中小企業のDX推進のサポート紹介①


小笠原 啓介 氏
浜松磐田信用金庫
システム統括部 ITサポートセンター 課長代理
複数のベンダーの商品をラインナップし、困りごと相談のあった企業に提案を行っている。例としてはこのようなものがある。
i. 勤怠管理
ii. ワークフロー
iii. 順番管理(受付)
iv. テレワーク
v. EC
vi. 経営診断
今後の展開としては「商材の拡充」「提案職員のレベルアップ」を行い、取引先へのサービスを充実させたい。

【第1部-3】中小企業のDX推進のサポート紹介②


井上 勝 氏
遠州信用金庫 経営アシスト部 部長
経営指標を利用した課題の可視化をする場合、例として次のようなステップで支援を行っている。
i. 黒字企業と比較して、どこに問題があるかを分析する。
ii. そこを改善するために何をすればいいかをともに考える。
iii. 間接労務費に問題があるならそこを削減するための工数削減などを提案。
金庫内での事例を取引先企業へ転用するケースもある。例として紙を用いた注文をスマホを用いたものに変更した。生じたメリットは、ペーパーレス、請求書等自動作成、顧客データベース作成、郵送費削減など。
 
RPAを活用して、「職員の自宅職場間の通勤距離調査」を行い、人で行う場合に比べて360人の300時間の作業を30時間に削減できた。

【第2部】パネルディスカッション 

ファシリテーター:
浜松ソフト産業協会 森川 恭徳 氏

パネラー:
西日本電信電話株式会社 佐藤 麻希 氏
三光製作株式会社 山岸 洋一 氏
株式会社イハラ製作所 堀尾 健人 氏
浜松磐田信用金庫 小笠原 啓介 氏
遠州信用金庫 井上 勝 氏

製造業の経営者様に伺います。いろいろな経営課題がある中でDXに着手した理由は?

山岸氏:実現したいことや目標を達成するためにあらゆる手段を考える中で、我々の規模や実力でも手が届きそうなものには積極的に手を出してきた。
 
堀尾氏:製造部であってもオフィス作業があるため、その負荷を減らすことで、より本質的な品質に携わるところを強化してもらいたかった。また、属人化も解消したかった。

DXを提案している中で、お客様はどういった観点で決定していくと感じているのか?

佐藤氏:2年くらい前までは目的はないがAIを使ってみたいと言われることがあった。これは大事な一歩。この成功体験がデジタル化を進めたいに繋がり、その経験を繰り返しながら全社で取り組むことが必要だという考え方に移ってきている。まずは何でもいいから入ってみることが重要だと考えている。

金融機関に伺います。DXに踏み出すお客様とそうでないお客様がいると思うが、どのように感じているか?

小笠原氏:相談を受けた案件に対して伺うため、お客様も心の準備ができているケースが多い。しかし、何から着手していいかわかっていないことも多いため、話を伺い課題を具体化して、着手するポイントを決めている。また、入れて終わりではなく、いかに定着させるかが重要だと思う。振り返りをすることで便利になったことに気が付くはず。それが成功体験となり活性化に繋がっていく。

井上氏:両者の大きな違いは将来を見据えたリスクヘッジをしているか、2年後3年後により良くするために何をしなければならないかを考えているかにある。業務効率化のRPAは、実際に見せることで前向きになっていただけることが多い。

社内のDX人材をどのように育成しているのか?

佐藤氏:データを可視化する知識を得ることが重要。技術的なスキルアップと世の中の事例を知ることが人材育成の近道と考えている。
堀尾氏:困りごとをソフトウェア会社に相談できることが大事と考えている。システム屋ではないため、DXに突っ込んだ人材はいないが、中小の製造業ではExcelが使えれば課題を解決できることが多く、それはクリアできている。
 
山岸氏:本当にその問題に気付き、気付いた問題をどのように解決するかというロジカルシンキングがデジタルを使う側としては重要なスキルだと考えている。プログラミングするのはソフト会社の方にお任せして、IT人材というよりは、問題に気が付き、デジタルを見据えた課題解決をできる人材を育てている。

もともと社内にDX人材がいたのか?

小笠原氏:従来のシステム統括部は金庫内のみ、対お客様にはシステム化の部署はなかったが、今年の4月から新設した。
井上氏:デジタル推進部があり、もともと専門職として採用しているスタッフがいる。ただ、人数は増やしておらず、システムサポートは限られた人材で対応している。

費用対効果を考えるときに、どこがボトルネックとなるか?

佐藤氏:前に進まないときは、システムに掛かるお金がとても大きいことが多い。その前に簡単なお試しができないかを提案するようにしている。
 
山岸氏:お金に換算できて投入費用と効果がきちんと比較ができる状況がつくれれば簡単な話だが、効果の部分は無形効果でお金の換算が難しいケースがある。人材や人材の育成、それから機会損失、これらをどうみるかがポイント。そこにどのような判断を下すかは会社の文化や考え方次第となる。
 
堀尾氏:最終的な着地点は、新しい付加価値を見つけたり、今の仕事のやり方を変えることにある。その結果としてコストダウンが発生すると考える。
 
森川氏:費用対効果がわかりやすい見える化できるものと、まずは小さなできることからやって機会損失を逃さないものと2つある。いろいろなことを回しながらやっていくことがDXだと思う。
 
小笠原氏:デジタル化したことでできたマンパワーを他のことに割くことができる。それだけでも効果がある。

質疑応答

Q:DXには工場、従業員とのコミュニケーションが必要だが、どのように進めたか?
A:1人のスーパーマンだけでは進まない。いかに人を巻き込むかが重要。方向性は経営層が決めるが、実行時には立場や役職関係なく思ったことを素直に言い合えるワークショップを実施していく。

Q:DXについてどこに相談すべきか?
A:デジタル化を目的にしているのであればIT企業に相談すべき。経営課題に直結するものであれば、目的と課題を分解し、どこに相談するかを考える。

まとめ

森川氏:デジタルの本質は、スピード感や手間を減らすこと。単にデジタルツールを使うのではなく、どのようにプロセスを変えていくか、どのように経営課題に適用していくかが重要と考える。実際にお客様との接点や、品質やモノに接する時間を増やすことで、次の経営課題や会社自体を変えていくことになっていく。製造業においてはDXを難しく考えずに小さなことから始めてみること、IT企業はお客様の経営課題に肉薄していくことが重要。IT企業、製造業、支援機関で三位一体となり、DXがより良い方向に向かっていく環境になってほしい。
主催:NPO法人 浜松ソフト産業協会
共催:浜松地域中小ものづくり企業IoT化推進協議会
後援:浜松市 浜松商工会議所 公益財団法人 浜松地域イノベーション推進機構
協力:浜松未来総合専門学校 浜松いわた信用金庫 遠州信用金庫
NPO浜松ソフト産業協会
浜松ICTシンポジウム実行委員会
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