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お知らせ

第3回 浜松ICTシンポジウム(2月3日終了)開催概要のご報告*期間限定

2017年4月7日

第3回 浜松ICTシンポジウム 開催報告

Hamamatsu Information and Communication Technology Symposium 2017

2017年2月3日に開催されました第3回浜松ICTシンポジウムも多くのご参加を賜りました。
皆様に厚く御礼を申し上げますとともに、開催当日の概要をここにご報告申し上げます。
2017年3月吉日 NPO法人 浜松ソフト産業協会

「未来価値の創成3」新たな扉を開くもの
開催日時:2017年2月3日(金)14時開会
会場:ホテルクラウンパレス浜松 芙蓉の間
主催:特定非営利活動法人 浜松ソフト産業協会


【第1部】量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ高度知識社会基盤の実現


山本 喜久 氏
内閣府 革新的研究開発推進プログラム ImPACT プログラムマネージャー
[基礎編]
量子コンピューティングにおける最先端の内容が講演されたが、それは非常に難解であり、抄録で技術的なことについて言及することは、誤謬をはらむ危険性もあるため要旨のまとめに終始したい。

山本氏の研究は「内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」の量子コンピュータの研究プロジェクトの成果である。

現代コンピュータ技術を支える電子回路の微細化技術が限界に近づき、18ヶ月ごとにコンピュータの性能が2倍になるというムーアの法則の終焉が現実のものとなってきた。わかりやすい例として巡回セールスマン問題(※1)に代表される組合せ最適化問題を解くには現代型のコンピュータではすべての入力値に対して総当たりの計算をする必要があるため、都市の数が増えるに従って莫大な量の計算が必要となる。例えば60都市のケースを解くには10の80乗の組み合わせが想定される。
※1 セールスマンが都市を回るのに最短となるルートを探索する問題

そのため、現代コンピュータとは計算原理が全く異なる新しい計算機モデルの必要性が認識されており、それが量子コンピュータである。

組合せ最適化問題とは、様々な条件の下で、多数ある選択肢の中から最適なものを選び出す問題で、その多くは相互作用するスピン群のモデルである「イジングモデル(※2)」のエネルギー最低状態を求める問題に変換可能であることが知られている。
※2 磁性体の性質をあらわす統計学上のモデルで、隣接した格子点のスピン相互作用を考慮したエネルギーが最低になるときが安定な状態であるとする。

そのために、様々な物理系を用いて人工スピン群を作製した量子コンピュータが研究されている。

大きく分けて3つの方式が研究されている。
  • ゲート型:量子ビットに対して組み合わされた演算回路「量子ゲート」を利用する。
  • アニール型:超伝導方式の量子ビットを使用する。「量子ゆらぎ」の性質を用いて物理的に安定な状態へ変化させる。
  • 相転移型:パラメトリック発振器や半導体レーザーを使用し、相転移現象により解を求める。
 
[応用編]
ImPACT研究開発プログラムでは、次のような課題を解決するための手法を研究してきた。

  • 創薬、無線通信、スパース推定、機械学習などの分野で必要とされる大規模な組合せ最適化問題を高速で解くために量子ニューラルネットワークコンピュータを開発する。
  • 到来するクラウド社会でのセキュリティ担保のために、暗号通信と秘密分散を組み合わせたネットワーク技術を開発する。
  • 物質探索や分子合成の現場で必要とされる、制御しやすい理論モデルを実装した量子シミュレータを開発する。

これらの課題を解決するための研究が今回説明されたもので、光パラメトリック発振光を光ファイバーリンクで直接つないだものでイジングモデルを実装するコンピュータである。

人工スピンとして光パラメトリック発振器(Optical Parametric Oscillator:OPO)の位相を用いている。OPOは、0またはπの位相しかとらない特殊なレーザ発振器で、位相0、πをそれぞれ上向き、下向きのスピンに対応させることができる。神経系のニューロンの代わりにOPOパルスに情報が乗せられるわけである。
根本的な違いは、情報処理に際して現代コンピュータは電子数(電圧変化 0V/1V)をCMOS回路に保持するのに対し、量子ニューラルネットワークでは情報は光パルスの振幅というアナログ量に安定的に保持され、かつ測定フィードバックによって解の候補に物理的に誘導することで極めて高速に情報処理を行うことができる。

また今回量子ニューラルネットワークとして実装されたNTTマシンは、他の原理で研究されている量子コンピュータと違い極低温・超高真空が不要で常温・常気圧で動作し、通常のコンピュータがおかれるラックへの搭載も可能である。

さて、その性能であるが、量子ニューラルネットワークを記述する近似理論モデルを各種コンピュータで走らせた場合の速度比較を記載する。
CPU(Intel Xeon, W3530, 2.80GHz)
GPU(NVIDIA Tesla, G2075, 1.15GHz, 448Core, 1.03TFLOPS※3)
スパコン(PEZY-SC, 1024Core, 8192Thread, 733MHz)
※3 FLOPS(フロップス、Floating-point Operations Per Second)

速度:N=2000スピンの問題に対してCPUを基準にすると
CPU
1
CPU+GPU
x20
スパコン
x2500
QNN
x48000
QNNでは、問題サイズが大きくなっても計算時間の桁数が大幅には増加しない
産業への応用について、本講演では主に下記の3事例に触れた。
  1. 化合物探索(複雑な化合物系の初期フィルタリング)
  2. 無線通信システム(時々刻々と変化する無線通信における周波数バンドや送信パワーの効率的な割り当て)
  3. スパース推定(歪をうけた天体、医療などの観測画像から元画像を効率よく復元する)

本年中にこのQNNをクラウドコンピュータとして利用できるサービスが開始されるという。構造上の特性により問題の与え方にモデル化などの技術が必要なため、GUIを介しての提供となるということであった。

逆に言うと、現段階では解ける問題の性質に制限があり、「組合せ最適化問題」のモデルに落とし込めることが条件となるようだ。

最後に、QNNの神経科学との接点として、脳のMRIデータとの比較が提示された。もともとのイジングモデルが脳の神経ネットワークと似た構造であることから、人間の脳(神経系)の外部認識や意識に対する物理的アプローチとして新たな手法となりうると締めくくられた。
 
◆◆◆

非常に難解な講演であったが、これから来る膨大なデータ処理が求められる時代において、超並列演算を可能にする新たなアーキテクチャがそう遠くない未来に実現する可能性が示された。またその応用範囲についても具体的な言及があったことに興味をそそられるものであった。
◆晝馬日出男(浜松ソフト産業協会 理事長)より

小生が山本氏の講演で得たものは次のようなことです。

①量子コンピュータの実用化はまだまだ先の話と思っていたが、内容はかなり現実的なものとなっていた。これはこの秋からこの量子コンピュータを、クラウドに組み込み公開するというところまで来ているということです。この量子コンピュータを内蔵するクラウドに通常C言語で、アクセスすれば必要に応じて並列演算の量子コンピュータに自動的に転換され、超高速演算を試してみることができるところまで来ているということ。つまり“Qビット”と呼ばれる量子コンピュータ特有の演算子を使うための新しい言語の習得の必要がなく、活用できるということは画期的です。

②並列演算(現在のノイマン型コンピュータは逐次演算)できる、情報量が同時に200万個と米国やカナダの5から10のレベルから見ると圧倒的であること。

③真の人工知能を考えると、基本的に人体は37兆個の細胞から成り立っているといわれ、この各々が約1000個の入力端子(リセプターと呼ばれる)を持ち、なおかつ同時並列処理がなされているという。現在の人工知能は、その意味で“もどき”であり、真の人工知能を確立するのには、高速、大量の並列演算コンピュータの助けを借りないとできない。

~その他は本抄録を参照ください~


【第2部】製造業におけるIoT戦略と最新動向


川野 俊充 氏
ベッコフオートメーション株式会社 日本法人 代表取締役社長
ドイツ発のI4.0から各国間の連携へ
ドイツ発のIndustrie4.0 は情報技術による広い意味での生産性向上という試みと、そのネーミング(第4次産業革命)のインパクトによって強い影響力を発している。それに触発されるようにアメリカではIIC(Industrial Internet Consortium)が、日本でもIoT推進コンソーシアム(ITAC)が、それぞれ製造業の競争力強化で遅れをとらないように標準化を進めようと動き出している。

さらに最近ではドイツがハブになりそれぞれの標準化団体が国際間で連携する動きも加速している。それはドイツのシーメンスやボッシュ、アメリカのGE・IBM・AT&T・cisco・Intel、日本の自動車産業や家電産業がそれぞれリーダーとしての牽引している構図だ。

これらが目指すところは、生産工場での情報がネットワークに繋がり、その情報がリアルタイムでつぶさに把握できることはもちろん、多品種少量の受注情報に対しても工場が素早く対応し生産体制を作ることができるようになることまでも想定しており、多種多様なニーズへの対応が求められる時代への一つの解を示すものだ。

このような生産体制を構築するためにはそれらを制御するPCとコントローラ(PLC)、通信環境が重要となるが、ベッコフオートメーションはそのPCとソフトウェアを自社開発し、通信規格のEtherCATの開発元でもある。EtherCATはトヨタ自動車に採用されたことから一躍、通信規格の代表として注目されるようになった。

本講演のトピックスは次の2点である。
“App Store for Machines”
“駿河精機株式会社の「AIによる加工条件の自動最適化」”
1.App Store for Machines
製造業における加工プロセスにおいては詳細な技術情報が不可欠だが、そのノウハウは特定のプレイヤーが保持しているケースが多いため、発注側から見るとノウハウを持たない加工業者に依頼をすることに品質や納期のリスクが発生することになり、ノウハウを持たない受注側もチャンスを失うことになる。

同様の工作機械を保持している加工業者間で特定の情報だけを抜き出した加工ノウハウを売買できるようになればそれらの問題を解決することになる。ノウハウを持った加工業者にとっても、自社の設備の稼働率が高く受注困難な場合においてもそのノウハウがお金を生んでくれる可能性があるわけだ。

そのノウハウを売買する場が “App Store for Machines” というわけである。その例がAXOOM の提供するアプリケーション群である。
https://www.axoom.com/en/

例えば “WiCAM NC Converter” というアプリケーションは、NC プログラムを他の機械用のNC プログラムに変換するソフトウェアである。このような作業はこれまでノウハウを持った技術者が個別に対応することが多かったが、それらのノウハウがこのアプリケーションによって解決することになる。

物作りにおけるノウハウという暗黙知が設計や製造のデジタル化に端を発し、データとして解析され、設備の効率的な運用や体系的な人材育成に結びつけられることになる。

これらの取り組みはあらゆる産業機器で応用される可能性がある。
2.AIによる加工条件の自動最適化
ここではBECKOFFと駿河精機株式会社との取り組みが紹介された。

従来は顧客からの設計仕様を設計データ、生産指示、加工PGへと技術者が落とし込んでいくプロセスであった。それをまずは顧客からのデータを最終工程までデジタルデータで一気通貫に落とし込んでいる。様々なデータを統一の手法で管理するためにベッコフの管理シェルを採用した。

次に手をつけたのが加工工程と加工プログラムの自動化である。データがあってもその加工プロセスを作り込むのは技術者であるが、様々な要因が加工の仕上がりに影響を及ぼすため、その条件を作ることには深い経験が必要となる。

そこで、様々な加工条件における品質を画像によって状態判断し、それを機械学習させることにより工程設計と切削パスの最適化を行うというものである。このサイクルを何度も繰り返すことで、新たな受注においても最適なパスを素早く出すことを目指していて、成果が出つつある。設計製造ソリューション展でも展示された。
◆◆◆

川野氏は第1回の浜松ICTシンポジウムに続いて2度目の講演となり、前回ではまだ耳新しかった「Industrie4.0」の現在の座標を示した講演となった。

ノウハウのアプリケーション化による販売となると日本の製造業界には拒否感を持って受け止められるのではないかと思うが、この I4.0 というのはドイツの国家戦略であることを忘れてはならない。彼の地では(時には利害関係がある内部で主導権争いをしながら)他地域に対して優位に立つべく国家的にこのような動きをしている。

IoTというキーワードは既に「工場の情報化」という段階を通り越して、その上流・下流へと社会実装されつつあることを示した講演であったと思う。


協賛・賛助協賛およびご後援いただいた皆様に心より御礼申し上げます。
*以下50音順敬称略

◆協賛(4社)
NTTコミュニケーションズ(株) 西日本電信電話(株)
浜松ホトニクス(株) ヤマハ発動機(株)

◆賛助協賛(28社)
(株)ITSC (株)ITロボット塾 (株)アスカプランニング (株)アドウィル
(株)アバンセシステム 天方産業(株) (株)アミック (株)アルファプロジェクト
(株)アローセブン エグジーテック(株) (株)エヌエスティー (株)FKC
(株)エンテック (株)カタナコーポレーション (株)カワイビジネスソフトウェア
(株)ゴードーソリューション (株)CAIメディア (株)シーポイントラボ
(株)システミクス (同)simpleA (株)電興社 (株)東海情報システム
(公財)日本電信電話ユーザー協会 (株)浜名湖国際頭脳センター (株)モアソンジャパン
(株)ユーシン ユニバーサルネットワーク(株) レクソル(株)

​◆後援(15法人)
浜松市 浜松商工会議所 (公財)浜松地域イノベーション推進機構
国立大学法人 静岡大学 公立大学法人 静岡文化芸術大学 光産業創成大学院大学
(株)静岡銀行 浜松信用金庫 遠州信用金庫 磐田信用金庫
静岡新聞社・静岡放送 (株)中日新聞東海本社
K-mix(静岡エフエム放送(株)) FM Haro! 浜松ケーブルテレビ(株)

今後ともご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

2017年3月吉日
NPO浜松ソフト産業協会
浜松ICTシンポジウム実行委員会
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