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お知らせ

第2回 浜松ICTシンポジウム(2月10日終了)開催概要のご報告*期間限定

2016年3月16日

第2回 浜松ICTシンポジウム 開催報告

Hamamatsu Information and Communication Technology Symposium 2016

2016年2月10日に開催されました第2回浜松ICTシンポジウムは、
昨年の初回開催に続き、多くのご参加を賜りました。
皆様に厚く御礼を申し上げますとともに、開催当日の概要をここにご報告申し上げます。
2016年3月吉日 NPO法人 浜松ソフト産業協会

「未来価値の創成2」コンピュータはどこまで賢くなるか!?
開催日時:2016年2月10日(水)14時開会
会場:ホテルクラウンパレス浜松 芙蓉の間
主催:特定非営利活動法人 浜松ソフト産業協会

コンピュータはどこまで速く、どこまで大容量になるか


小柳 光正 氏
東北大学 未来科学技術共同研究センター (NICHe) 教授
三次元LSI試作製造拠点 (GINTI) 拠点リーダー
1.はじめに
講演はコンピュータ・半導体デバイスのこれまでの歴史、発展の経緯を紐解くことから始まった。
話は70 年前、1945 年にさかのぼる。
初期の電子計算機は真空管による固定プログラム方式であったが、まもなく真空管からトランジスタ方式へ、固定プログラム型からプログラム内蔵型へとアーキテクチャの大転換があった。
これらの流れは、小型化・低電力化・大容量化・高信頼性化という必要性から生じたパラダイムシフトであり、基本的に現在のコンピュータの進歩の方向性と変わっていないことは大変興味深い。
2.メモリ
メインフレームコンピュータ時代を迎え、増大するプログラム・データを格納する主記憶としてDRAM が発明され、これによりシステムの需要は急速に高まったが、当時のプロセス技術では平面的な構造のキャパシタの微細化は困難であり大容量化を阻んでいた。
1975 年、小柳氏の発明による3 次元積層構造を採用したスタックドキャパシタ型DRAM により、大容量化へのブレークスルーとなりDRAM は一気に興隆期を迎える。
1986 年当時、NEC・東芝・日立をはじめとする国内半導体メーカが世界売上のトップ10 のうち、6 社が食い込むなど日本のメモリ産業がもっとも輝いた時代でもあった。
これ以降、メモリ産業は次第にプロセスの高精細化競争・価格競争にシフトしていき、韓国・台湾などのメーカに主役を受け渡していくことになるわけだが、日本が主役になる以前は米国メーカーの独擅場であったことを考えると、改めて永続的に事業を続ける事の難しさを痛感する。
3.マイクロプロセッサ
マイクロプロセッサの源流も日本にあった。
国内の電子計算機メーカであったビジコン社が、当時産声を上げたばかりのメモリデバイスメーカであるインテル社に依頼したことがきっかけとなり、東北大出身の嶋正利・テッドホフ・フェデリコ・ファジン氏らの画期的な発明によるマイクロプロセッサ 4004 が生まれた。
現在まで続くマイクロプロセッサの歴史はここに始まる。
その後、メインフレームからミニコン、ミニコンからPCへと急速にトレンドが変化すると、その旺盛な需要にこたえるように処理能力を上げる。過去30年でクロック周波数約200倍、IO処理能力約800倍、トランジスタ数に至っては約2500倍という驚異的な処理能力の向上を成し遂げたという。
4限界と発展
以上のように市場のニーズに答えるようにより性能の向上の一途をたどったメモリ・マイクロプロセッサであるが、近年その成長の限界が見え隠れするようになってきた。

まずはクロック周波数。発熱などの問題によりその向上が著しく鈍化している。
また集積度についても物理的プロセスの限界から、これまでのような進歩が難しくなってきている。これら懸案についてメーカも手をこまねいているだけでなく、さまざまな解決策を模索している。

クロック周波数に対する解決策のひとつが Many-Core 戦略。
これはCore数、すなわち計算器自体を増やして処理能力を上げ、その分クロック周波数は下げるという戦略である。Dual Coreから始まり、今では携帯端末であっても Quad-Core も珍しくなくなってきた。またGPUと呼ばれるグラフィック演算専用のプロセッサでは、数百・数千というCoreを持つものまで開発され圧倒的な処理能力により今やスーパーコンピューターにも採用されるに至っている。

そして集積度の向上に対する解決策が3次元積層化である。
高集積化を2次元的に解決するのでなく、3次元的に解決するという提案は一見すると簡単に思いつきそうな発想だが、その実現は困難を極め、これまで実用化には程遠かった。
ここでも小柳氏らの活躍により先進的なプロセスが開発され、ようやく実用期に入ってきた。これにより、DRAMやFlashROM等の記憶素子は大容量化が実現されるだけでなく、セル間の配線長の短小化により、アクセス速度が何十倍も高速化されるという。
5.その未来、人との融合
これらの超高速・超大容量デバイスをどこで活かすのか。
これまでの計算機としての使い方だけでは、これらデバイスは持ち腐れとなってしまう。そこで極めて高度な処理系である人体を模したコンピュータの活用こそ、これからのデバイスの活躍の場となると氏は指摘する。

Deep Learning をはじめとするいわゆるAIは、人間の脳を模したニューラルネットワークの発展から進歩を遂げたが、奇しくもハードウェアデバイスも同じ道を歩んでいるという。ソフトウェアでは実現不可能な人との物理的なインターフェース、すなわち視覚器の置き換えとなるイメージセンサを高度化した人工網膜チップや、ニューラルネットワーク的な視覚情報処理プロセッサなど、人との統合化がコンピュータの未来の進むべき道の一つということが今回の講演で明らかになった。
 
◆◆◆

コンピュータの歴史から最新トレンド、今後の方向性までを包括的にお話しいただきました。全く別のアプローチではあるものの、ハードウェアの進化の方向とソフトウェアのそれとが同じ方向に向かっていることなど、実に示唆に富んだ内容でした。

PepperとIBM Watsonが創り出す新たな世界


中山 五輪男 氏
ソフトバンク 首席エバンジェリスト
1.Pepper に関する話題とビジネスについて
2015年6月に一般販売が開始された対話型ロボットPepperは受注が好調で売り出し時には1000台が1分で完売するほどの人気であった。その後も順調に販売が続きこれまでに約7000台が出荷されているという。
またサポート体制が手厚くなるfor Biz バージョンも2015年10月に発売されている。
カスタムアプリケーションの開発もできるため簡単に業務にフィットさせた活用が可能である。

その主な法人での利用先での事例が紹介された。
・SMBC
セミナー進行や懇親会内での乾杯の音頭
・ベネッセリアル
店舗での教育コンテンツの配信
・ネスレ
コーヒーマシンの販売員
・ロフト
雑貨の店頭接客で人よりも成果を上げる例もあった。
・みずほ銀行
窓口業務(ロボてなし)
・日産
専用アプリでの商品説明、
子どもの相手をすることで女性客がゆっくりできる環境をつくった。
・レンタカー
沖縄で外国人の接客を行いスタッフの負荷を軽減した。
動画でロフトの渋谷・横浜店舗での事例が紹介された。1日300回の接客をこなし的確な商品を勧めるなど成果があり、顔認識により性別・年齢・感情などを読み取り接客するという。
このように対人コミュニケーションに強みを持つPepperは、受付、接客、高齢者介護施設、教育現場などで活用の場が広がっている。
2.IBM Watsonについて
IBMではWatson(以下Watson)は人工知能ではなく、
「言葉を認識し、問いに対して最適な答えを探索し返す」という意味で
「コグニティブ・コンピューティング」と呼んでいる。

まず、自然言語を認識し類似語の組み合わせも考慮しながら意味を抽出する。
次に、膨大なデータをネットワークから探し出し仮説を抽出し回答する。
最後に、その結果が期待される回答だったかのフィードバックから学習する。

そういう意味から適用される分野は広い。

質問と応答という意味では、コールセンターや銀行業務。
発見や予見の能力を活かす、新薬やがんの治療方法、食材からレシピを創出するなど。
さらに、判断する能力からは、保険業務などがある。

日本ではSoftbankとの独占契約によって提供される。
※シンポジウム後の2月18日(木)に正式にAPIの提供が開始された。

ソフトバンク社内ではWatsonを活用した、ソフトバンクブレーンという営業支援システムを稼働させるという。
社内LANに外部からアクセスし、社内リソース(在庫、スケジュール、電子ファイル、現在の居場所などなど)から最適な回答を返すことで営業活動を支援するものだ。
当然のことながら、他の企業でもWatsonをベースにしたシステムを構築することができる。

Pepperに現在搭載されている人工知能はクラウドAIといって、人間で言うと2歳くらいの能力という評価だが、今後PepperにWatsonを搭載することで対応力が格段に向上することが期待できる。
◆◆◆
 
このようにさまざまな事例を挙げ、人とのコミュニケーションの接点としてのロボットの可能性について講演していただきました。特に動画からは、高い知能を持つだけでなく、誰もがコミュニケーションしたくなるようなロボットの存在価値が示されたように思います。

Deep Learning(深層学習)の最新動向と産業へ与えるインパクト


大野 健太 氏
Preferred Networks(PFN) エンジニア
PFNは機械学習・深層学習技術の開発を行う日本の企業であり、シリコンバレーにもオフィスを構え研究活動を行うとともに、最近ファナックから9億円、トヨタ自動車から10億円の出資を受けるなど注目を集めているベンチャー企業である。

彼らのビジョンはこうだ ~IoTの広い分野でDeep Intelligence を実現する。~
今後のIoT時代においては様々なセンサーや端末から得られる大量のデータをすべてクラウド上に集めて処理するには通信コストに見合わず、リアルタイム性も実現が難しくなってくる。またデータの量だけではなく種類も増大するためもはや人の判断では追いつかない。このプロセス全体を学習させて処理できるようにしていく、ということだ。

機械学習/深層学習についてはわかりやすい例を挙げて解説が試みられた。
機械学習では画像解析や文章解析では特徴量を抽出して学習するが、その特徴の指定の仕方で学習の成果が大きく変わってしまう。精度をあげるために想定していなかった特徴量が重要になる可能性もある。つまり特徴の抽出自体が職人技になる。

さらに踏み込んで、深層学習は、その特徴量抽出自体をニューラルネットワークを用いて学習させてしまう技術。これによりパターン認識の正確性が飛躍的に向上した。例えばある画像が何を示したものかを判断させるコンテストでの正答率が、これまでの限界だとされる75%からここ数年で96%程度まで上昇した。

これまでできなかったことが可能になるには人工知能の研究が進んだこと以外にも背景がある。
・コンピュータの進化やモバイル機器の性能向上 → デバイス上で深層学習が可能になった。
・センサーの進化 → 低価格でさまざまなデータが取れるようになった。
・アクチュエーターの進化 → 自動運転、ロボット、ドローン等。
これらが繋がることでIoT時代が実現していく。

ここでPFNの研究開発の一部が紹介された。

1.ロボット制御
例えばロボットによるバラ積み部品のピッキングでは、画像と深層学習によって、成功例と失敗例(正常状態と異常状態)を順次学習していくことで、正確に判断することができるようになる。

2.自動運転
複数台のモデル車(=レゴ マインドストーム)の位置をARマーカーで取得し、そこからシミュレートされたセンサーデータを用いて自動走行車を学習させると、最初はぶつかりそうになりながら混乱した状況になるが、数時間でぶつからない走行を学習し、スムーズ走行状態に至った。
3.画像生成
ある特徴量を持った画像や文字の書体を、ある特異な事例を基に生成することができる。例として挙げられたもので有名なのは、夜空の青と月の黄色が印象的なゴッホの「星月夜」をもとに猫の画像と合成したものだ。
またPFNの研究ではないが、より自然に近い花の画像を生成した事例も挙げられ、殆ど本物と見分けがつかないものであった。

今回これらの事例で学習に使用されたエンジンは、PFNが提供するオープンソースDeep Learning Framework である“Chainer”である。
深層学習で使用される構造は問題の複雑さに比例して「深度」が深くなる傾向にある。

GoogleNetでは22階層の深度を膨大なコンピュータリソースを駆使して解析している。Chainer では既存のフレームワークでは困難であったループや分岐など複雑なニューラルネットワークの構築が可能であるため、必要なプログラミングが少なくても結果に結び付くという利点があるということだ。

このような技術の応用分野としては、音声検索、画像生成、eコマース、自動運転、ロボティクス、医療画像、マーケティング等が挙げられる。

また課題としては次のようなものがあげられる。
1.大量のリソースが必要(データ・マシン(GPU)・時間・電力)
   → 対策 さくらインターネットと大規模演算GPUクラスタを共同構築した。
2.新しい技術が出てくるのが速く、常識が何度も覆る
   → 技術が枯れにくい。
3.外界要因の変化で予測精度が常に劣化する危険がある。
   → 精度劣化を前提としたシステム設計が必要。
4.要求を満たさない場合の原因追究が困難。

これらのことを前提としたうえで適切に使えば効果が発揮されると考えられる。
 
◆◆◆

質疑応答では講演者の一人小柳氏をはじめ熱い質疑が交わされました。総じて深層学習に関する疑問や期待に満ちたものでした。
印象的であったのは、もはや機械学習・深層学習と言ってもコンピュータの中でどれだけ知能が成長するかということにとどまらず、ロボットやセンサーなども含めた周辺環境を巻き込んだ産業形成までをにらんで研究が進められているということ。そしてそのスピードが予想以上に加速されつつあるということです。

総括

今回の3講演を通してみると、最新の話題を提供しているものの、
1.コンピュータチップの大容量・高速化技術 2.ロボットと人工知能 3.深層学習
と、一見まとまりがないようにも見えます。
しかし、小柳氏の講演でもあったようにコンピュータリソースが大容量・高速化すれば、端末側で処理できることが多くなります。
そうなると、中山氏、大野氏の講演のように人工知能や機械学習の恩恵を受けられるシチュエーションも増えてくる。産業用ロボットのみならず、ヒューマン・インターフェースとしてのロボットの可能性もその恩恵のひとつでしょう。
そうした意味で、今回の3講演は、これから芽が出始める産業をバックヤード側から眺めたり、フロントエンド側からのぞいてみたり、という機会を提供できたように思います。

聴講者アンケートからは、どの講演も有意義であったという声が多数で、とりわけDeep Learning、Pepper/Watsonの講演は身近に話題になりつつある例もあったせいか非常に面白かったという声が多く、ビジネスのアイデアが生まれた、実際に使ってみたいといううれしい声もありました。

運営においては昨年の反省から受付時間を倍にし、チケット制の導入で受付集中時の混雑は解消できました。また、椅子だけでは疲れるとのご意見に今回は聴講席にテーブルを置きましたが、ほぼ満席になったため窮屈な想いをされた方もおられたようです。また講演や質問が長くなりすぎ、休憩時間が減ってしまった課題は、次回に持ち越し、改善をしてまいります。

来年に向けてもテーマ選定は大きな課題です。
すでに参加者アンケートからもさまざまなご要望、キーワードを挙げていただいておりますが、
皆様のご意見ご希望を伺い、次代の潮流とICTの役割や変化に論議および調査を重ねながら
「今後注目すべきテーマ、それが産業にどんなインパクトを与えるか」という本質を提供できるよう、企画を進めてまいります。

今回は聴講に約150名、懇親会に約80名様のご参加と、活況のうちに閉幕することができました。
ご参加、ご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げます。
第2回の成果と反省を踏まえ、業界、地域および当協会会員に有効な派生を促すとともに、
本シンポジウムの一層の充実を図るべく努力してまいります。
引き続きご支援、ご尽力を賜りますよう、何卒お願い申し上げます。
協賛・賛助協賛およびご後援いただいた皆様に心より御礼申し上げます。
*以下50音順敬称略

◆協賛(5社)
NTTコミュニケーションズ(株) (株)河合楽器製作所 西日本電信電話(株)
浜松ホトニクス(株) ヤマハ発動機(株)

◆賛助協賛(22社)
(株)アスカプランニング (株)アドウィル アドバンスシステム(株) 天方産業(株)
(株)アミック (株)アルファプロジェクト (株)アローセブン エグジーテック(株)
(株)エヌエスティー (株)エフ・エスポワール (株)エンテック
(株)カタナコーポレーション (株)ゴードーソリューション(株)CAIメディア
(株)シーポイント (株)システミクス (同)simpleA (株)電興社 (株)東海情報システム
(株)浜名湖国際頭脳センター 松本印刷(株) (株)モアソンジャパン

​◆後援(16法人)
浜松市 浜松商工会議所 公益財団法人 浜松地域イノベーション推進機構
国立大学法人 静岡大学 公立大学法人 静岡文化芸術大学 光産業創成大学院大学
(株)静岡銀行 浜松信用金庫 遠州信用金庫 磐田信用金庫
静岡新聞社・静岡放送 (株)中日新聞東海本社 日本経済新聞社
K-mix(静岡エフエム放送(株)) FM Haro! 浜松ケーブルテレビ(株)

今後ともご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

2016年3月吉日
NPO浜松ソフト産業協会
浜松ICTシンポジウム実行委員会
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