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浜松から世界へはばたくITキッズ

2018年2月15日

ウルトラSがWRO国際大会に出場しました

NPO法人浜松ソフト産業協会では、浜松市が「学術都市+IT都市」として発展するために、地域産業に貢献する人材育成の役割を担う浜松ITキッズプロジェクトを推進しています。

ITキッズプロジェクト3期生の佐治由洋くん(小学6年生)と愛美さん(小学4年生)のチーム「ウルトラS」が、2017年8月に開催されたWRO(World Robot Olympiad)浜松予選会のエキスパート競技小学生部門で優勝しました。さらに、9月の国内決勝大会では、エキスパート競技部門優勝、プレゼン部門優秀賞という素晴らしい成績を収め、11月にコスタリカで開催されたWRO国際大会に出場しました。
ウルトラSが初めてWRO浜松予選会に参加したのは、由洋くんが4年生、愛美さんが2年生のときです。由洋くんがITキッズの試験に合格したその年の秋にWROのことを知り、もともとロボットに興昧を持っていたこともあって、翌年の浜松予選会ベーシック競技への出場を意識し始めました。ウルトラSのコーチであり、二人の父親でもある佐治斉氏(静岡大学情報学部情報学科教授)は、「まだ早いから出場は来年にしたらどうか」とアドバイスしましたが、由洋くんの決意は変わりませんでした。これがきっかけとなり、ウルトラSはWROの大会出場を毎年目指すことになりました。

そして2017年、WROのルールは毎年1月中旬に英語で公開されますが、佐治氏はコーチとしていち早くその内容を確認されました。そして由洋くんはその情報から、モーターとセンサーの配置やオブジェクトを入れる部分の構造などロボットの全体像についてアイデアを考えました。ただし、実際にウルトラSが浜松予選会に向けた準備を開始したのは4月に入ってからでした。由洋くんはプログラム作成、愛美さんはロボッ卜の組み立てを担当し、由洋くんのアイデアを形にしていきます。

これまで2年連続で浜松予選会では優勝してきましたが、国内決勝大会では2年連続準優勝だったため、今度こそ全国優勝を狙おうと由洋くんと愛美さんは決意しました。一方、8月の予選会以前から周囲のウルトラSへの期待が非常に高く、今大会での優勝は親として嬉しい反面、コーチとしては最もプレッシャーを感じる大会となりました。

■国内決勝大会に向けて

浜松予選会は夏休み中に開催されるため多くの時間を費やすことができましたが、9月に入ると学校が始まったこともあり、決勝大会に向けた準備の時間が思うようには取れませんでした。そんな中でもウルトラSは、決勝大会にてサプライズルールを含め満点で見事優勝を果たしました。

地区大会の後、国内決勝大会までは1か月ほどしかなく「大会で技術的に求められるレベルは上がるが、子供たちそれぞれに習い事があって練習時間がとれないため、出題されるサプライズルールを想定したり、ITキッズでの優勝者練習の時間を活用して現状のレベルを維持することに徹した」と佐治氏は振り返ります。また、ITキッズプロジェクトの3期生ロボット講師堀内氏からサプライズルールのアイデアをいくつか出してもらうことなどで、ウルトラSは様々なルールに対応できるようになっていきました。

なお、ウルトラSのロボットは、HiTechnic社製カラーセンサーを使っているため、照明の周波数の影響を受け易い欠点があります。地区予選が行われた浜松では60Hzですが、富士川以東(東京)では50Hzになるため、50Hzでも動くように調整して検証を行わなければなりません。そのために、沼津工業高校や神奈川工科大学まで足を運んで調整し、会場の照明の調査に時間をかけるなど、家族のサポートがあったことも決勝大会で良い結果を収める一因となりました。

なお国内決勝大会では、競技部門だけでなくプレゼン部門もあるため、ポスターを自分たちで作成し、いろいろな方々に発表を見てもらい、わかりやすく説明する練習をしました。その結果、審査員から高い評価を受け、ブレゼン部門でも優秀賞を受賞することができました。
このプレゼン部門では、3分間で説明し、3分間の質疑応答時間内で、なされた質問に対してすぐに回答できる力が必要となります。
「ウルトラSは技術面を含めてすべて自分たちが理解してポスターを作成しているので、質問に対して正確に答えられたことが一番大きかった」と堀内氏は語ります。

決勝大会を振り返ると、昨年は惜しいところでの準優勝だったこともあり、由洋くんにとっては、「やっと全国優勝を掴んだ」という思いでした。

実は、決勝大会のサプライズルールの攻略において、1回目の走行時は、ロボットを充電しすぎて歯車のパワーが強すぎたため、ブロックを落とす場所が想定エリアからほんの少しはみ出してしまいました。その時点で、すでに他の2チームが満点を取っていたこともあり3位でした。「このままでは優勝できない」と思い、2回目の走行では慎重に調整し、祈るような気持ちで臨みました。最後の最後まで諦めなかったことが悲願の初優勝につながったと思います。

■国際大会に向けて

国内決勝大会が終わると、11月の国際大会に向けて準備を開始しました。日本から15チームが国際大会に出場することになっていましたが、ウルトラS以外のチームは、チームまたはそのコーチが過去に国際大会を経験していました。浜松では国際大会について詳しい人が全くいないため、どうやって戦ったらいいのか何もわからない状況でした。例えば、HiTechnic社製カラーセンサーの利用のため、コスタリカ国内の電源周波数を調べようとしたら、ある有名書籍には50Hz、インターネットでは60Hzと記載されているなど情報収集にはかなり苦労しました。また、コース床面の材質やスター卜の方法が国内大会と違うなどとにかく情報が不足していました。その状況を打開するため、YouTubeでWROコスタリカ大会の動画を確認しライントレースが正確にできるよう同じような材質のコースを自作したり、間違った周波数が記載されていた出版社に確認したり、英語の対策をしたりと息つく暇もありませんでした。

もともと由洋くんは国際大会の前、「初出場なのでそんなに上位は目指さなくていい」と思っていましたが、ご家庭の対策のおかげでロボットが滑ることなく安定したライントレースができ、28位という好結果につながりました。国際大会ともなると上位入賞チームは満点が当たり前で、スピードがとてつもなく速いのですが、ウルトラSはスピードで競うよりも自分たちの持ち味である安定した走行での満点を目指しました。

国際大会は11月11日、12日に開催され、両日とも当日の朝にサプライズルールが発表されました。英語で説明が記載された用紙が配られ、ウルトラSはサプライズルールを含め、試走ではパーフェクトに近い状態でした。しかし本番では、国内大会と異なりスタート直前に電源を入れさせられたためロボットが安定せず、ゴールまでは到達しましたが、オブジェクトの置き場所が数ミリずれるなど、おしくも満点には届きませんでした。

■2日間の国際大会を終えて

愛美さん:
練習ではパーフェクトを出せていたのに競技になったら思うように動かず、審判に質問もできなくて運に任せるしかなかった。初日に3回走行できたが、順位は81チーム中39位だった。2日目で盛り返して総合28位となったが、もう少し情報収集ができていたらもっと上位を狙えたと思う。
由洋くん:
国際大会に出れただけでもうれしいが、両日ともサプライズルール以外では160点満点をとれていたので、サプライズルールの対応ができなかったことが残念だった。
総合28位は初出場の結果として決して悪くはないが、来年はサプライズをクリアしてさらに上位を目指したい。
ウルトラSの2017年国際大会への挑戦の結果は、総合28位という世界で十分通用する技術レベルだと言えました。将来は人を助けるロボットや自動運転など幅広い技術者を目指すという由洋くん。今後のウルトラSの活躍に期待したいと思います。
浜松ソフト産業協会は、浜松ITキッズプロジェクトを通して、ロボットやプログラミングに興味を持ち、世界で活躍する技術者を一人でも多く輩出できるよう、浜松市や静岡大学との産官学連携による早期児童ICT教育を応援しています。
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